アミアイゴ
本項は、海水魚「アミアイゴ」に関する記事です。アミアイゴの生態、外観から分かる特徴、生息エリア、和名、学名、アミアイゴに関する研究・文献、アミアイゴの食べ方、沖縄の郷土料理に一つであるスクガラスについて解説しています。
アミアイゴ
アミアイゴ
沖縄本島のダイビングで撮影したアミアイゴ群れの水中写真
アミアイゴの水中写真を中心に、紹介していきます。
毎年、初夏のころにスキューバダイビングをしていると、海岸沿いにアミアイゴの稚魚の群れを見かけます。
アミアイゴの群れは、サンゴ礁域や岩礁域の浅瀬のリーフ上など水深3m以浅で見かけますが、数百匹というよりも、数千匹にも見えるほどの巨大な群れで集まり、ダイバーだけでなく、シュノーケラーや、場合によっては地元の漁師を楽しませてくれる小型の海水魚です。
アミアイゴの毒について
アミアイゴを含むアイゴの仲間は、背鰭・腹鰭・臀鰭のトゲが太く短く、万一刺さった場合は鰭の毒腺から出た液が注射され、激痛が走ります。
この毒針は、アイゴが死んでも有効なので、釣った場合は血抜きのまえに各鰭を切り落とすということは、釣りをする人にとっては一般的に知られています。
アイゴの地方名について
先述した特徴から、山口県ではアイゴの仲間を「お医者」と呼んだり、熊本では肉が磯臭いことから「ションベンウオ」と呼ばれています。
沖縄では「スク」と呼ばれており、このアイゴ属の幼魚は沖縄土産や居酒屋メニューで豆腐の上に塩漬けになって乗せられ、「スクガラス」という郷土料理として食べられています。
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アミアイゴの外観特徴
少なくとも体側上半部には虫食い状斑紋がある。
ムシクイアイゴと似ていますが、アミアイゴとの違いは、ムシクイアイゴのほうが大きく、全身に虫食い斑紋が入っていることや、尾鰭の先端まで模様が入っていることで区別は可能です。
アミアイゴの分布
アミアイゴは、八丈島、静岡県大瀬崎、和歌山県宇久井・串本、徳島県牟岐、高知県柏島、鹿児島県内之浦、屋久島、琉球列島~台湾、東沙群島、西沙群島、南沙群島、東インド~太平洋(ハワイ諸島、イースター島を除く)での観察記録がある。
アミアイゴの食性について
アミアイゴは基本的に雑食性です。しかし、ほとんどが藻類を捕食することが知られています。
上に紹介した、アミアイゴの水中写真でも、群れ全体で浅場の岩やサンゴに根付いている藻類を突いている様子が分かります。
アミアイゴの和名・学名・英名について
和名 : アミアイゴ( スズキ目 / アイゴ科 / アイゴ属 )
学名 : Siganus spinus
英名 : Little spinefoot
撮影場所 : 沖縄本島西海岸
撮影水深 : -3m
アイゴの和名の由来について
「藍子」というのはまったくの当て字で、アイヌの言葉で"刺のある物"を総称して「アイ」と呼ぶことからアイゴの和名の由来となったという説が、アイゴの和名の由来としてもっとも有力説といわれています。
アイゴの種類について
アイゴの種類について紹介します。
アイゴ科の仲間は12種で13タイプ存在するようで、アイゴ科の全種類を沖縄県の海で観察することができそうです。
※カッコ内は成魚のサイズを示しています。
ヒフキアイゴ(18cm SL)、セダカハナアイゴ(33cm SL)、ハナアイゴ(35cm SL)、アミアイゴ(17cm SL)、アイゴ(25cm SL)※琉球列島にはシモフリアイゴ型(23cm SL)が多い、ムシクイアイゴ(35cm SL)、ゴマアイゴ(33cm SL)、ヒメアイゴ(20cm SL)、マジリアイゴ(23cm SL)、ブチアイゴ(35cm SL)、サンゴアイゴ(23cm SL)、チリメンアイゴ(28cm SL)
アミアイゴに関する研究・文献について
アミアイゴに関する研究や文献もいくつか存在しています。以下に代表的なものをいくつか紹介します。
- 北村忠男、横井大吾、佐藤憲一、小林真理子、熊田芳明、栗田駿介、松山拓也、岡田実紀子、田所昌也 (2019). 飼育下におけるアミアイゴ Amia calva の繁殖・養殖技術の確立. 水産増殖, 67(3), 167-173.
- 高山宏樹、大野真司、小山俊郎、野田佳久 (2017). 河口干潟におけるアミアイゴの採集と生態学的解析. 沿岸域技術, 16(2), 107-112.
- 大野真司、小山俊郎、野田佳久、中井克己 (2015). 河口干潟におけるアミアイゴの卵・仔稚魚の生態的特性. 沿岸海洋研究, 53(1), 11-16.
- 西山真紀子、鵜飼克文、堀田光憲 (2014). 千葉県河口干潟におけるアミアイゴの資源量・分布・生態調査. 千葉県水産総合センター研究報告, (43), 57-63.
スクガラスとは
スクガラスとは、スク(アイゴの稚魚)をカラス(塩漬け)したものとして、スクガラスという呼び名になっています。
沖縄旅行などで、国際通りやホテル近くの居酒屋でメニューを見たときに、?マークが浮かぶ方も多いかと思いますが、スクガラスは沖縄の郷土料理の一つとして、泡盛やオリオンビールと一緒に楽しめる珍味おつまみです。
珍味系食べ物の宿命と言いますか、Googleで検索すると、「スクガラス まずい」とか出てきますが、珍味系は好き嫌い以前に、人によっては受け入れ可能かどうかの瀬戸際に立たされる運命ですので、これは仕方ないかなと思います。
沖縄県内の居酒屋では、スクガラス単品よりも、固めの豆腐にスクガラスを乗せた、スクガラス豆腐のほうが目にする機会が多いような気がします。
スク漁は沖縄のニュースの定番
毎年7月頃になると、沖縄県内の各地でスク漁の漁獲に関するニュースが流れます。参考程度にインターネットで公開されているニュースと動画コンテンツを埋め込んでおきます。
ちなみに、スクガラスは漁港や道の駅、スーパーなどでも購入できる場合がありますが、通販などでもお取り寄せ可能です。瓶詰めスクガラスがAmazonで販売されていたり、Yahoo!ショッピングで購入できたりします。